子どもの偏食。
子育てをしている方にとって、なかなか切実な悩みのひとつですね。
この記事では、子どもの好き嫌いや味覚過敏について深く掘り下げいきます。
また、自身の体験談を交えながら「偏食をする子へどう接するべきか」をご紹介します。
感覚の過敏な子(や大人)は「自分と他の人の感覚が違う」ということに気がついていない場合が多い
ふだん人は自分の価値観で生きています。
自分にとってのあたりまえが、他人にとってもあたりまえだと思い込んで行動しがちです。
それは何も悪いことではなく、そうやって物事の基準をはからないと生きていくのに不便だからです。
(味覚過敏に限らず)幼い頃から感覚過敏を持っていると、それが「自分にとってはあたりまえ」なので、他人と自分の感覚にズレがあることに気付けません。
放っておいても、経験を重ねると自然にそのズレに自分で気付きますが、その「気付き」が遅れると悩みや劣等感などを長く抱えることになります。
これは、ご両親にとっては「育てにくい」、本人にとっては「生きづらい」状態です。
ともにツラい状態ですね。
子育てでは、まず自分の価値観を外して、子どもの言うことを信じ受けとめてあげることが何より大事です。
ただの好き嫌い?味覚による過敏?偏食には適切な対応を。
子どもの偏食は、ただの好き嫌いだけではありません。
味覚や口の中の触覚が過敏で、どうしても食べられないこともあります。
通常子どもは、大人が思うよりはるかに感覚が鋭くささいな「違い」も感じとる能力があります。
自閉スペクトラム症(ASD)などの特性を持っている子の場合、食感や匂いなどに敏感で「食べること」にとても慎重になっていることが多くあるのです。
これは持って生まれた特性であり「気の持ちよう」では解決できません。
本人にもどうしようもないことなので、無理強いをして食べさせても良い結果は得られないでしょう。
また、周りの人からの「わがまま」や「大げさ」などの言葉に傷つき、食事に対して恐怖さえ感じるようになっていくこともあります。
「私はわがままで自分勝手なのだろうか。みんなのように美味しくモノを食べる事さえできない」と劣等感や悩みを抱いてしまうと、食欲もでなくなっていき悪循環に陥っていしまいます。
そうならないように、できるだけ早く理解してあげて適切な対応を心がけることが大切です。
偏食で特定の食べ物を嫌がる子への食べさせ方は?
子どもの様子を見ながら、まず一口だけのチャレンジから始めてあげます。
いつか慣れて少しずつでも自分で食べだすならラッキー、くらいの軽い気持ちで大丈夫。
何度試みてもどうしても嫌がるようなら、もう無理強いせずさっさとあきらめましょう。
いいんです。お母さんも子どもも頑張らなくて。
世の中には、楽しくて時間を使いたい事がたくさんあります。
「ちゃんと~」とか「普通これくらいは~」とか考えなくていいんです。
そんなこだわりは捨てて、「どれだけ親子で楽しい時間を過ごせるか」ということに全力投球しましょう。
「いつか勝手に食べだすわぁ」と気楽に考えた方がお互いが楽ですよ。
一番大切なことは、好きなものを食べさせて、まずは食べる意欲を出させてあげること。
意欲が出てくれば、家族の人やお友達が食べているものも「食べてみようかな」と思うのです。
味覚過敏のある人にとって、食事とは「口の中の異物」
実は私も自閉スペクトラム症(ASD)で味覚過敏の持ち主です。
幼い頃からひどい偏食ぶりで、食べ物に対して皆とは違う感じ方をしていました。
私の中で食事とは、一種の『闘い』でした。
お皿に盛られた見知らぬ食べ物。
まず、見た目や匂い、自分が知っている食材なのかどうか、など口に入る前からその闘いは始まります。
食事中はずっと、味、触感、飲み込むときの異物が喉を通る感覚など「見知らぬ異物」との闘いに全身で身を投じなければなりません。
「食事をする」というただそれだけの行為が、味覚過敏の人には「口の中の異物と闘う毎日」となるのです。
※私の主観です。すべての自閉スペクトラム症(ASD)の人にあてはまるわけではありません。
「いつもと違う」ことを嫌がるASDの特性
口に入れ咀嚼し、飲み込む。
たったそれだけの事です。
ですが、当時の私には、どうしてもそれが苦痛だったのです。
完全に口の中から「異物」がなくなったあとでさえ安心できなかった。
まだ、後味が残っているのですから。
そして、その闘いはいついかなる時でも容赦なく続くのです。
同じメニューでも家庭と学校、外食時など、そのときの状況はさまざま。
例えば、カレーひとつとってみても、料理をする人によって切る形や大きさ、味つけなどが違います。
味や見た目が違えば「いつもと一緒ではない」ため、全く別の食べ物のように思えるのです。
同じカレーだと言われても、「違う」ので納得できませんでした。
口の中の感覚過敏
また、美味しく思う食べ物でも、口の中の触感が過敏でどうしても食べられないということもあります。
次にあげる例は私が子どもの頃に感じていたことです。
- お肉→噛んでも噛んでもなくならない
- キノコ類→どうしても口の中にある異物が飲み込めない。
- バナナ→ぐちゃぐちゃした気持ちの悪いものが口の中にある。
- ソフトクリーム→ドロッとしていてどうやって飲み込むのか解らない
など、味は平気でも食感(口触り、噛みごたえ、粘度など)が苦手で困っていました。
口の中の感覚が過敏なためか、例え好きなお菓子を食べる機会があってもよく断っていました。
私の心には常に、せっかく落ち着いている口の中を乱したくない、という思いがあったのです。
特性を理解してあげないと自己肯定感が低くなる可能性も
このような偏食傾向は、味覚過敏、こだわりの強さが影響して「食べられるもの」と「食べられないもの」に振り分けられます。
これらは自閉スペクトラム症(ASD)の特性です。
ですが、子どもの頃は理屈など解らず、もちろん自分が他人と感覚が違っているなんて思いもよりませんでした。
「どうしてみんな何も感じないのだろう」
「どうして私はみんなのように食べることを楽しめないのだろう」
と、自分が人より劣っている存在だと感じたこともありました。
そんな私に、母は決して無理やり食べさせようとはせず、好きにさせておいてくれたのです。
それは「あなたはあなたのままでいいんだよ」と言われているようで、だからこそずっと自分を好きでいることができたのでしょう。
大人になった今でも、多少の偏食は残っています。
ですが、成長するに従って感覚の過敏も以前より良くなり食べれるものはどんどん増えましたし、健康のことも考えてメニューを選んだりもします。
自分を大事にする心、つまり自己肯定感をしっかりもっていることが大切なのですね。
子どもに偏食があっても焦らず、「いつか自分で考えて少しずつ克服できる」ことを信じてあげましょう。
味覚過敏のある人が偏食になるのは自分の身を守っている
人間は、手と唇と舌の感覚が他のどこよりも優れています。
それらの感覚情報は生きて行く上で重要であり、できるだけたくさんの情報が得られるように人間の体はできているのです。
「食事」は、ただでさえ様々な情報を集める口の中に異物を入れる行為です。
通常よりもずっと感覚が過敏である自閉スペクトラム症(ASD)の人には、食べるという行為それ自体が恐怖の対象となります。
ですが、一度経験したことのある食べ物ならば「大丈夫」だという安心感が芽生えます。
味覚過敏の人の偏食は、恐怖に対する防衛反応でもあるのです。
「普通」の人は、ほとんど意識をしないだろうこれらの事が、自閉スペクトラム症(ASD)の人には日常的に起こっています。
もちろんASDの人でも、その症状や特性はさまざまです。
個人によって、また少し違った感じ方をする人もいるし、味覚による偏食などまったくない人もいるでしょう。
ですが、ASDの特性をもつ多くの人が「いつも決まったものを食べる傾向がある」のは、こういう感覚の鋭敏さがひとつの原因となっているのではないでしょうか。
今日の処方せん
- 感覚の過敏な子(や大人)は「自分と他の人の感覚が違う」ということに気がついていない場合が多い。
子育てでは、まず自分の価値観を外して、子どもの言うことを信じ受けとめてあげることが何より大事です。 - 劣等感や悩みを抱いてしまい食欲もでなくなっていくと悪循環に陥っていしまいます。
そうならないように、できるだけ早く理解してあげて適切な対応を心がけることが大切です。 - お母さんも子どもも、頑張らなくていい。
その子の「感じ方」を尊重して見守ろう。 - 苦手なものは無理強いせず、好きなものを食べさせて、まずは食べる意欲を出させてあげること。
意欲が出てくれば、家族の人やお友達が食べているものも「食べてみようかな」と思うのです。 - 自己肯定感をしっかりもっていれば「いつか自分で考えて少しずつ克服できる」
- 食べ物も含め、物に対してのこだわりは発達障害の特徴なので、そのままを受けとめてあげましょう。