発達障害は大きく分けて3つに分類さます。
※特性や症状の程度はひとりひとり異なり、いくつかの障害を合併している人もいます。
・自閉スペクトラム症 / 自閉症スペクトラム障害
【ASD】Autism Spectrum Disorder
・注意欠如・多動症 / 注意・欠如多動性障害
【ADHD】Attention-Deficit・Hyperactivity Disorder
・学習障害
【LD】Learning Disorder
または限局性学習障害
【SLD】Specific Learning Disorder
発達障害とは別ですが、これから説明する知的障害の症状も併せ持つ場合があります。
・知的障害
【ID】Intellectual Disability
この記事では、知的障害【ID】について、種類や症状、特徴までを詳しく説明します。
知的障害【ID】とは?
知的障害【ID】とは、
知能を中心とした発達の遅れが幼少期から見られることをいいます。
もう少し詳しく言うと、
発達期(18歳未満)までに生じた知的機能の障害により、
認知能力(理解・判断・思考・記憶・知覚)が
全般的に遅れた水準にとどまっている状態
となります。
※けがや病気、加齢などが原因で18歳以降に知的機能が低下した場合は知的障害には含みません。
知的障害【ID】の定義
知的障害【ID】には、明確な定義がありません。
この障害は「知的な能力が遅れている状態」であり、その原因や障害の表れ方がひとりひとり違ってきます。
特徴としてでてくる症状が個人によってさまざまであるため、定義付けがきわめて難しいのです。
主な目安としては以下の3つとなります。
-
- 知的な能力に明らかな遅れがある。
- 社会や集団のルールに行動を合わせることが困難。
- その障害が発達期(18歳未満)に起こっていること。
学習するとき、または社会で生活するときに必要な「理解力」」記憶力」「判断力」の機能的な遅れ。
これを適応能力といい、周りの様子や状況に自分の行動を適応できない場合も含まれる。
知的障害【ID】の主な特徴
知的障害【ID】は、4つの等級に分類されます。
等級別に、主な症状と特徴をご紹介いたします。
軽度知的障害
IQ50~70の知的障害をさします。
<症状>
食事や服の脱ぎ着、排せつなどの日常生活は支障がありません。
学業面では遅れを感じることもありますが、年齢を重ねながら考える力を身につけられます。
言語の発達がゆっくりで、18歳以上でも小学生程度の学力となります。
<特徴>
- 清潔、服の着脱を含めた基本的な生活習慣が確立している。
- 簡単な文章での意思表示や理解ができる。
- 漢字の習得が困難。
- 集団に合わせることや友達との交流はできる。
中度知的障害
IQが35~50の知的障害をさします。
<症状>
言語の発達や、運動能力に遅れがみられます。
身の周りのことは部分的にはできますが、全てをこなすことは困難です。
<特徴>
- 指示があれば衣服の着脱はできる。
- 状況や場合に合わせて選んだり調整したりすることは困難。
- 入浴時、自分で身体を洗うことはできるが洗い残しがある。
- お釣りの計算が苦手。
- 新しい場所での移動が困難。
- 交通機関の利用が困難。
- ひらがなでの読み書きはある程度できる。
重度知的障害
IQが20~35の知的障害をさします。
<症状>
言語の発達や、運動能力に遅れがみられます。
学業面では、ひらがなでの読み書きならある程度できます。
情緒の発達が未熟で、身の周りのことを一人で行うのは難しいです。
衣食住には保護や介助が必要になる場合もあります。
<特徴>
- 着替え、入浴、食事などの日常生活に指示や手助けが必要。
- 簡単なあいさつや受け答え以外のコミュニケーションが苦手。
- 体の汚れをあまり気にしない。
- 服の乱れをあまり気にしない。
- 一人での移動が困難。
最重度知的障害
IQが20以下の知的障害をさします。
<症状>
言葉が発達することはなく、叫び声を出す程度にとどまることがほとんどです。
身の回りの処理は全くできず、親を区別して認識することが難しい場合もあります。
しかし、適切な訓練によって、簡単な単語を言えるようになるケースもあります。
<特徴>
- 衣服の着脱ができない。
- 便意を伝えられない。
- 言葉がない。
(身ぶりや簡単な単語で意思表示をしようとすることもある) - 食事に見守りや介助が必要。
知的障害【ID】の診断方法・基準
診断までの流れ(医療機関によって異なります)
問診
- 赤ちゃんの時から今までの社会性や対人コミュニケーション
- 今までの言葉の発達
- 幼稚園・保育園での様子
- 1歳半健診や3歳児健診などでの様子
- 既往症や家族歴
など、現在までの状況を尋ねられます。
なるべく詳しく答えられるようにしておきましょう。
発達面で知的障害の疑いがありそうか
発達にどんな特性がありそうか
などを見立てていきます。
行動観察
遊びの空間で子どもを遊ばせ、それを注意深く観察します。
問診で聞いたことと照らし合わせてみていきます。
心理検査(知能検査)
ウェクスラー式知能検査「WISC-Ⅳ」がよく用いられます。
本人のもつIQ水準をチェックして、言語理解、知覚推理などを検査します。
※ウェクスラー式知能検査は、年齢によって受ける検査が違います。
・幼児(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月)→WPPSI
・学生児(5歳~16歳11ヶ月)→WISC
・成人(16歳〜)→WAIS
いずれも、専門家(臨床心理士)との1対1で行う個別式の検査となります。
また2歳未満の子どもの場合や医師から必要と認められた場合は
知能検査に代わる記述式の発達検査や、新版K式発達検査などの実施式の発達検査を受けることもあります。
新版K式発達検査
年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。
検査は、
「姿勢・運動」(P-M)
「認知・適応」(C-A)
「言語・社会」(L-S)
の3領域について評価されます。
検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。
検査者は検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。
適応能力検査
vineland-II(ヴァインランド)がよく使われています。
0歳から92歳の幅広い年齢帯で使用することができます。
同年齢の一般の人の適応行動をもとに、発達障害や知的障害、あるいは精神障害の人たちの適応行動の水準を客観的に数値化する検査です。
対象者にどんな特性があるのかを評価してくれます。
また教育や福祉分野の個別支援計画の立案はVinelandの評価に基づいて行われることがあります。
その他にも適応能力の検査として、以下の検査がよく使われています。
- ASA旭出式社会適応スキル(幼児〜高)
- S-M社会生活能力検査(乳幼児〜中学生)
脳画像診断
MRI脳検査、など。
診断
これら様々な情報をもとに、
“知的障害【ID】であるかどうか”
“等級の分類はどちらにあたるか”
を総合的に判断します。
また、こうした過程で、
“ほかの障害(ADHDやASDなど)が合併していないかどうか”
も確認します。
知的障害【ID】かもと感じたら、まずは専門機関で相談を
知的障害【ID】かも、と疑いを感じられたら、まずは専門家に相談をしてみましょう。
発達障害の疑いがある場合には、専門の医療機関を紹介してくれます。
子どもの場合
・保健センター
・子育て支援センター
・児童発達支援事業所
・発達障害者支援センター など
おとなの場合
・発達障害者支援センター
・障害者就業・生活支援センター
・相談支援事業所 など
知能検査や発達検査は、児童相談所などで無料で受けられる場合もあります。
障害について相談することも可能です。
学校へ相談するのも方法のひとつ
小学生以降であれば、担任の先生に相談してみるのも良い方法です。
学校へ相談すると、学校での生活の様子などを配慮し、それらを考えた専門家を紹介してくれます。
また、軽度である場合、幼少期には障害だと気付かれにくいことも。
小学校高学年以降に気付かれることが多いとされています。
周りから理解してもらえず、本人がつらい思いをしていることもよくあります。
できるだけ早く、知的障害【ID】に対する教育方法を学び、療育などの対処をすると、その後の発育が大きく違ってきます。
はじめの一歩を踏み出すのには、大変な勇気と努力がいると思います。
ですが、その一歩を踏み出すことによって、さまざまな悩みや不安が軽減されるのです。
もし、知的障害【ID】ではないと診断された場合でも、今ある困りごとや悩みを乗り越えるためのアドバイスをしてもらえることも多いものです。
また、ほかの発達障害(ASDやADHDなど)だと判明することもあります。
おわりに~理解とサポートの大切さ~
知的障害を含め発達障害には、家族や身近な人の理解とサポートが必要です。
サポートをする側には忍耐や努力が求められます。
それは、簡単なものではなく、うまくいったりいかなかったりを何度も何度も繰り返すことでしょう。
理解はしていても、親も感情をもった人間ですから、適切な対応がつらく困難な場合も多々あります。
ですので、失敗してもいいのです。
対応を誤ったときは、そのあとまた話し合えばいいのです。
『人は、話すことでわかりあえる』
親も子どもも、同じひとりの人間です。
どんな状況でも
「自分の気持ちを伝えあうことでお互いの絆は深まり、少しずつ前へ進んでいっている」
ということを忘れないでください。
根気よくサポートを続けることが、お互いにとってのより良い未来へとつながっていくのです。