発達障害のひとつである、自閉スペクトラム症(ASD)。
自閉スペクトラム症(ASD)の当事者として、症状や特徴、原因をわかりやすく解説しています。
自閉スペクトラム症ってどんなの?特徴をみてみよう!
自閉スペクトラム症(ASD)のある人は、マイペースで他人に感心がうすく、人よりも物に関心がある人が多くいます。
それは、脳や脊髄にある神経の働きに、生まれつきかたよりがあるからなのです。
苦手なこと・得意なことのそれぞれの特徴は、こちらの記事でさらに詳しく書いています。
自閉スペクトラム症のある人が苦手なこと
まず、自閉スペクトラム症のある人の苦手なことを大まかにご紹介します。
- 人とうまくつきあうこと
- コミュニケーションをとること
- 感情をコントロールすること
- 突然の状況に対処すること
- 特定の感覚に対応すること
- イメージ通りに体を動かすこと
自閉スペクトラム症のある人が得意なこと
次に、自閉スペクトラム症のある人が得意なことをご紹介します。
- (好きなことには)びっくりするぐらいの集中力を発揮
- こだわりが強いことで、高い集中力と粘り強さを発揮
- (多動傾向がある場合)エネルギッシュである
- (多動傾向がある場合)積極的かつ行動的
- 共感覚(音に色や味、匂い、手ざわりなどを感じる脳の特性)を持っている人が少なくない
- 目で見たものを覚え、理解すること
- ゼロ・100傾向のため、些細なことも愉快で楽しいと感じるときが多くある(逆に小さなことでひどく落ち込むこともある)
- 五感が人一倍敏感であり、足音や車のエンジン音だけで、誰が近づいてくるか察知できる人もいる
自閉スペクトラム症のある人の生きづらさ
知能や言葉の遅れがない自閉スペクトラム症の人たちは、一見「ふつう」に見えます。
自閉症の特性を持ちながら、そのことに気づかれず、見落とされがちなのです。
人とかかわりを持つことが苦手、コミュニケーション能力に問題がある、想像力が乏しい、こだわりがある。
これらの特性を、「わがまま」「自分勝手」「なまけている」「努力不足」などと思われてしまいます。
その結果、叱られることも多くなり、本人もどうしていいのか、自分の何が悪いのか分からず、「生きづらい」思いをしていることが多いのです。
自閉スペクトラム症の原因はなんだろう?
自閉スペクトラム症は、中枢神経の働きに生まれつきかたよりがあることが原因だと考えられています。
中枢神経とは、脳と脊髄を中心とした神経のことです。
この神経は、目や耳、皮膚などから、言葉や音、味、痛みなどの情報を受け取るのです。
また、口や舌に言葉を話す命令や、体の各部分を動かす命令も出しています。
この一連の働きがうまくいかないと、情報や命令が正しく脳に伝わりません。
このような中枢神経の働きのかたよりが、自閉スペクトラム症ならではの感じ方、考え方につながっているのではないかと考えられています。
「スペクトラム」ってどんな意味?
自閉スペクトラム症の「スペクトラム」とは、「連続体」という意味です。
自閉スペクトラム症の特性は、人によってあらわれ方が違います。
そして、同じ人でも成長していくうちに変化します。
「ある特徴はめだつけれど、自閉症っぽくはない」など、見た目にはそう見えない人もいます。
その境界線ははっきりしていなくて、さらに、知的な遅れがある場合(知的障害)もあります。
そこで、
- そういったはっきりと区別しきれないものを無理に分けるのはどうなのか?
- 各タイプは別々のものではなく、ひとまとまりの連続しているもの(スペクトラム)とした方がいいのでは?
という考え方から「自閉スペクトラム症」という言葉が生まれたのです。
自閉スペクトラム症の様々な診断名
自閉スペクトラム症は、かつてはさまざまな呼び名で診断されていました。
しかし現在は、自閉スペクトラム症【ASD】としてすべて統一されています。
統一される前の、主な診断名は次の8つです(さらに細かく分けることもできます)。
- アスペルガー症候群
- 高機能自閉症
- 高機能広汎性(こうはんせい)発達障害
- 自閉症
- 早期幼児自閉症
- 小児自閉症
- カナー自閉症
- 小児期崩壊性障害
知的障害をともなう場合も
自閉スペクトラム症の人の中には、知的障害があらわれる人もいます。
知的障害は、脳や神経などの機能に遅れがあるために現れる障害です。
知的障害をともなう自閉スペクトラム症の場合は、気持ちを言葉で伝えたり、誰かと一緒に勉強や活動をしたりすることがうまくできません。
そのため、専門家の特別なサポートが必要となります。
知的障害があるかどうかは、知能テストで出てくるIQ(知能指数)の数値から分かります。
※知的障害については、こちらの記事で詳しく解説しています。
自閉スペクトラム症は神経発達症(発達障害)のひとつ
自閉スペクトラム症は、神経発達症(発達障害)のひとつです。
神経発達症は、大きく7つに分けられます。
※特性や症状の程度はひとりひとり異なり、いくつかの特性をあわせ持っている人も多い。
※当サイトは『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)に基づき解説しています。
- 自閉スペクトラム症
【ASD】Autism Spectrum Disorder - 注意欠如・多動症
【ADHD】Attention-Deficit・Hyperactivity Disorder - 限局性学習症
【SLD】Specific Learning Disorder - 知的能力障害群(知的障害など)
【ID】Intellectual Disabilities - コミュニケーション症群(言語症、語音症など)
【CD】Communication Disorders - 運動症群(発達性協調運動症、チック症など)
【MD】Motor Disordes - 他の神経発達障害群
【OND】
発達障害は、2013年から神経発達症群のなかに含まれることになりました。
そのため、最近では「発達障害」は「神経発達症」という呼び名に変わりつつあります。
当ブログでは、わかりやすくするために一般的に広く知られている「発達障害」という名前を主に使用しています。
発達障害のある子供の割合は?
発達障害のある子供の割合は、6.5%といわれています。
※2012年に実施された、文部科学省による全国の公立小中学生約5万人を対象とした調査結果で、2020年現在このデータが最新となります。
これは、「発達障害の可能性のある子供が1クラスに2人はいる」ということです。
(特別支援学校などに通う知的障害のある子の数は入っていないデータなので、実際はもっと多い可能性あり。また、このデータは学校の教職員のアンケート調査によるものであり、医師の診断を受けた割合ではないことにも注意)
発達障害には大きく分けて7つの分類がある、ということは先ほどもお伝えしましたね。
海外ではそれぞれ分類ごとの割合を出している国が多いのですが、日本では「発達障害」とひとくくりにした統計データとなっています。
実際、その特性ははっきりと分かれていなく、ほかの特徴も併せ持っている人も多いのです(例:ASDの特性が強いがADHDの特性も持ちあわせている、など)
ASDとADHDの特性を両方持っている私の意見としては、個別の割合ではなく、ひとくくりにした割合の出し方がやはり理にかなっているように感じます。
発達障害のある大人の割合は?
そして発達障害のある大人の割合もまた6.5%、つまり子供の場合の割合と同じです。
これは、発達障害は先天性の(生まれもった)ものであり加齢による増減はない、とされているためです。
そのため、先ほどの統計データはすべての年齢にあてはまると考えられているのですね。
(年齢を重ねていくと、経験によって症状が軽くなっていく・多動が落ち着いていくなどの傾向はありますが)
自閉スペクトラム症は目に見えない障害
自閉スペクトラム症は、目に見えない障害です。
そのため、
- わがままな人だ
- 変わり者だ
- 面倒くさい性格だ
- 自分勝手な人だ
などと思われ、周囲からなかなか理解してもらえず、集団からは浮いてしまいがちです。
しかし、本人はなぜ周りとうまくいかないのかが分からず、「私が悪いのかな」と自分を責めてしまうことも。
その結果、自己肯定感をさげてしまい、自信を失い苦しんでしまいます。
- 脳や中枢神経の働き方、情報処理のしかたが、ほかの大多数の子どもたちと異なり、少数派なだけである。
- 努力不足や性格、親のしつけなどの問題ではない。
- 日常生活で工夫をすれば、苦手や特性は良くなったり減ったりする。
ということを、早めに周囲やご本人も理解することが、最も大切な一歩となります。
今日の処方せん~理解とサポートの大切さ~
自閉スペクトラム症 (ASD)を含め発達障害には、家族や身近な人の理解とサポートが必要です。
サポートをする側には忍耐や努力が求められます。
それは、簡単なものではなく、うまくいったりいかなかったりを何度も何度も繰り返すことでしょう。
理解はしていても、親も感情をもった人間ですから、適切な対応がツラく困難な場合も多々あります。
ですので、失敗してもいいのです。
対応を誤ったときは、そのあとまた話し合えばいいのです。
『人は、話すことでわかりあえる』
親も子どもも、同じひとりの人間です。
どんな状況でも「自分の気持ちを伝えあうことでお互いの絆は深まり、少しずつ前へ進んでいっている」ということを忘れないでください。
根気よくサポートを続けることが、お互いにとってのより良い未来へとつながっていくのです。